11、12月の工事の進捗状況
11月はじめで木小屋と土蔵(蔵)の解体工事完了し、11月には文化庁より西山主任調査官にお越しいただきその指導をもとに、今から始まる修理の方針を決める会合を11月15日(金)に行った。
参加社
【文化庁】西山主任調査官
【広島県】伊藤主査
【三次市】古矢課長 山岡係長
【文健協】片桐 大阪監理事務所長 岡 参事 堤
【所有者】 奥 博光、まり子
※奥家住宅保存修理事業において ここまでの修理や経理方針、元受け業者などにつて説明、また、全体工程表を提示し、工事の進捗を説明(文健協 岡参事)
※土蔵・木小屋の調査結果の説明資料を提示し、土蔵平面の変遷や類例、さらに木小屋の建立後の改修について説明(文健協 堤技術員)
【土蔵】
・置き屋根の野地板部分張替えの時期,棟木や母屋の受け材の丸石は最初から塗籠屋根にめり込んでいたか、 丸竹組の下地といった塗籠屋根の使用見ると外壁がそのまま屋根にめり込んでいたとも考えられる 1階の北面の出入り口の痕跡(土蔵改造前は外側に出入り口があった、など報告と議論が交わされた。
【木小屋】
・当初から木小屋という名称か(明治の家相図では(薪屋)と記載
・当初2階ではなかったようだとするとなぜ高く建てたのか―推測だが茅を立てて保存するためではないか(岡)戦時中疎開していた時この小屋で茅を保管し近所の家の屋根の補修時に協調供給していたこと記憶している(奥)
・木小屋の腰壁は荒壁土と多くの玉石で層状構成されていた 土壁の土はこの小屋の土間にも使われている。 また腰壁は木の軸部とは構造的に接続していないことが確認できた。(堤)
※今回の解体で梁挿しに墨書の[大工喜八]は母屋の普請帳に記載の在ったこと確認。(奥)
◆ 解体調査で判明したことが多いので実績報告とは別に報告書を執筆しないか。(西山)
いくらかかるか。(奥)>数百万単位の話になる(片桐)
報告書を核となると、炭素年代の献呈論文集が先に墨書の写真を公表することになるが問題ないか。(西山)>工程月報にて先に公表した、(堤) >‘重文民家の集い’のHPでも掲載済み(奥)当該論文と報告書とでは性格が異なるため、順序は問題ないと思われる。(片桐)
報告書を核となると、計画変更はどうするか。(古矢)➡令和7年度予算を変更できないか検討しつつ、厳しいなら工程を1月でものばして令和8年度予算に組み込めばよい。
いずれにしてもそこまで大きな金額でないので対応できると思われる(岡)。
◆ 工事費変更概算書を示しつつ、指導を必要とする事項について説明。(岡)
【土蔵】
・下地杉皮葺を取り止め、さらに上塗塗替を減らすことでコスト削減したい。(岡)➡破損状況次第で判断する。(西山)
・母屋の補強について、受石を増やすのはどうか。(西山)➡垂木のたわみの解消も兼ねているため、添え木での補強のほうが良い。 垂木と桁を金物で固く結ぶ手法も加えたい。(岡)
・所有者は床を畳敷きより床板だけを望んでいるが。(岡)➡畳を撤去する場合は、現状変更する必要がある。(西山)
・高級な畳を整え湿度調整するのはどうか。(西山)➡むしろ腐りやすい(片桐)➡単純な畳のほうがよい。(岡)
・コストの観点から土間の叩きの範囲を狭めたい。(岡)➡使い勝手が悪いため、現状土間の東北部分を板敷にしたい。(奥)➡いずれも現場を見て判断する(西山)
・窓について隙間風をなくすため障子や板戸を固定したい(岡)➡可逆性を担保できるよう留意すること(西山)
【木小屋】
・小屋棟通りの小屋東、風対策として鎹(かすがい)などで引き付けたい。(岡)➡了解(西山)
・西面の壁上部のトタン張りを杉板で整備したい。➡トタン張りは仮設と考えるため、問題ない。(西山)
※ 上記修復について議論したこと記載しましたが所有者から使用上及び維持管理上のことから修復方法についての要望は提案すべきと考えます。
前回の母屋の工事では自分たちで調査をし、また多くの人にアドバイスをいただき、文化庁の指導でのミーティングで要望しましたが多くの提案を受けいれていただきました。 今後工事をされる皆様にも是非ご自分で調査また良きアドバイザーなどからの提案を吟味し、住みやすく維持管理しやすい住環境を得るべく行動することお勧めする次第です。
◆現地確認終了後のまとめ
【土蔵】
・塗籠屋根は状態がいいので、解体及び修理範囲は減じてよい。(西山)
・土間叩きは土台際の凹地のみ整備する方針でよい。(西山)
・床は湿気に強い畳を敷く方針でよい。(西山)
・北側はタンス部分も床と認識し、東半全体を畳敷きで整備してよい。(西山)
・窓はフェルトなどで隙間をふさぐ方針でよい。(西山)
・1階部分の窓はアクリル板で整備したい。(岡)➡了解(西山)
・窓は水切りを設けても良い。(西山)
【木小屋】
・崩壊した土壁は復旧してよいか。(岡)➡修理指導部門に確認し、返答する。(西山)
・帆掛瓦は雁振瓦の上に置いてあるだけの状態であったので。復旧の際はなくしてよい。(西山)
◆今後のスケジュールについて
・物置及び漬け物小屋の解体調査に取り掛かり、四、五月に現地指導をお願いできるよう事業を進めていく。(岡)
・元来勝手口門組立が工程通り完了できるか不安であったため、報告書作成となると、個々の工期を延長すればよい。(岡)
・報告書については、金額と相談していただきたい。(西山)
以上11月15日に文化庁西山主任調査官の指導をもとに今後の保存修理事業の木小屋 土蔵の修理事業を進めることとなった。12月現在修理に必要な木材の供給が遅れているため現在の見通しでは2月中旬から修復工事開始の予定である。
12月の工程会議では木小屋 土蔵の補修につての修復図面 基本的な考え方などしめされ論議された。また木小屋の報告書作成のための ’計画変更承認申請書‘【文健協作成】がしめされた。
(この申請書をもとに広島県 三次市 では追加予算申請を進めることになる。)
今回の木小屋の建築年代が明確(文化2年(1805年))で発注佐々木(奥)武十郎(重文奥家住宅 施主)大工喜八(奥家住宅建築時の大工)の墨書がある建物は日本で最も古い物入の小屋ということができるのではないかと考えている、
終わりに
今回の11,12月月報は工事が停滞しているため写真掲載がありませんが今回の修復工事の
心臓部に住当する復旧工事の詳細が記載されています。
2月からは今回の決定に基づき工事が進捗いたしますのでその写真をご覧ください。